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腎移植に関する詳しい内容

はじめに~移植に関心を持たれた皆さんへ

こんにちは!当ホームページを御覧頂いてありがとうございます。皆さんは移植医療に興味を持たれて、このページを目にしていると思います。昨今、「移植」について耳にする機会が増えてきていますが、実際「移植医療」とはどういうものなのか分かっている方ってそれほどいないのが現状です。「移植って誰でも受けられるものなの?」「大手術をして何か月も入院が必要なのでは?」「移植した腎臓はどれくらい持つの?」「すごいお金がかかりそう」「移植なんてしたら普通の生活ができなくなるのでは?」などなど疑問はつきません。一般に「移植医療」はハードルが高くて特別な人だけが受けられる特別な治療と思われていますが、そんなことはありません。普通に保険がきく医療ですし、何時間かの手術でほとんどは1ヶ月以内に退院できます。術後は拒絶反応を抑える免疫抑制剤という少し特別な薬をのむくらいで、日常生活はほぼ健常人と同じように行なえます。勿論個々の状況で、移植ができなかったり、種々の合併症が起きたり、スムースに行かなかったりすることはあります。しかし全体的には、多くの人が受けることのできる安全で結果の良い治療が移植医療です。当院では、主に腎移植を中心に病院全体で移植医療に取り組んでいます。当ページを御覧になり是非移植に関する知識を高めてもらって、移植医療に対する御理解を頂きたいと思います。 ※本ページの内容はあくまで当院で行われている移植医療に基づいて作成されています。施設により治療の内容に差異がある場合もありますので御了承ください。

<スタッフ紹介>

大田守仁医師

大田守仁医師

外科・日本臨床腎移植学会認定医・九州腎移植研究会幹事・沖縄県臓器移植推進員会委員

松嶺芳乃

松嶺芳乃

院内移植コーディネーター(ICU師長)

屋良順子

屋良順子

院内移植コーディネーター(透析室師長)

砂川エリ子

砂川エリ子

院内移植コーディネーター(病棟師長)

横瀬鏡子

横瀬鏡子

院内移植コーディネーター(病棟師長)

上原尚美

上原尚美

院内移植コーディネーター(病棟師長)

腎移植のすべてが分かる!

腎不全について

①腎臓の機能 ②腎不全になると ③腎不全の治療法

腎移植について

①腎移植のメリット ②腎移植のデメリット ③腎移植の種類 (献腎移植と生体腎移植)
④日本での腎移植の状況 ⑤腎移植の適応について ⑥拒絶反応について
⑦免疫抑制剤について ⑧移植後の生活について ⑨移植の費用について

当院での移植医療について

①当院での診療体制

②生体腎移植への取り組み

(1)生体腎移植ドナーの基準 (2)術前検査 (3)特殊な移植 (4)レシピエント手術 (5)ドナー手術

③献腎移植への取り組み

(1)献腎登録について (2)レシピエントの選定 (3)献腎移植が決まったら (4)献腎移植の現況

④臓器提供促進への取り組み

(1)移植に関する4つの権利 (2)当院での取り組み (3)臓器提供の実際

⑤教育啓蒙・研究学会活動への取り組み

膵臓移植について 移植外来のご案内 外部リンク

移植推進委員会

当院では、安全かつ高水準の移植医療を患者に提供するために院内のあらゆる職種部門が参加して「移植推進委員会」を設立し、移植に関する全ての診療、情報発信、普及活動などを一元的に行なっています。これにより院内のスタッフが情報を共有しよりレベルアップすることで、きめ細かく質の高い医療を行うことができるとともに、病院全体として移植医療に取り組んでいく体制を整えています。

委員長:潮平芳樹病院長(腎臓内科) 副委員長:城間寛副院長(外科) 実務責任者:大田守仁医師(外科) 医局:外科、泌尿器科、腎臓内科、循環器科、呼吸器内科、消化器内科、糖内分泌内科、神経内科、心療内科、脳神経外科、救急科、麻酔科、ICU、放射線科、整形外科、眼科、耳鼻科、皮膚科、婦人科、緩和ケア 看護局、検査科、栄養科、薬剤科、理学療法士、リハビリテーション科、システム科 事務局長、医療安全室、感染対策室、医事課、総務課、経理課、地域連携室 沖縄県移植コーディネーター:宮島隆浩氏 外部アドバイザー:北田秀久先生(九州大学臨床・腫瘍外科講師)

腎不全について

腎臓の機能

腎臓は左右に1個ずつ合計2個あり、体の背中側に位置しています。だいたい握りこぶしくらいの大きさで重さは120g前後です。腎臓は血液を濾過して尿を作り体外に排出します。尿を出すことによって、体の水分バランスを調整したり、尿毒素を排泄する働きがあります。その他にも、血圧調節や電解質バランスに関与したり、貧血の予防、骨の代謝、ビタミンの活性を行うなど体内の重要な臓器の一つです。

腎臓のはたらき

(1)老廃物の除去 (2)体液量の調節 (3)電解質のバランス調節 (4)血液を弱アルカリ性に保持 (5)造血刺激ホルモンの分泌 (6)ビタミンDの活性化 (7)血圧の調節 (8)不要になったホルモンの不活性化

腎不全になると

これら腎臓の機能が十分維持できない状態を腎不全と言います。腎不全になると排尿が十分できなくなるため体に水分が溢れ、肺水腫やうっ血性心不全、浮腫が起こり、また毒素を排泄できないことから尿毒症を起こします。また腎機能が正常の10%以下になると末期腎不全に進行し、高カリウム血症から致死的な不整脈を引き起こしたり、貧血の進行、血液の酸性化(アシドーシス)なども生じ、そのままでは命の危険にさらされることになります。 腎不全の原因としては、現在最も多いのが糖尿病性腎症です。次いで慢性糸球体腎炎、腎硬化症となっています。その他、先天性疾患が原因の場合もありますし、原因不明も10%ほどあります。

腎不全になると

腎不全の治療法

末期腎不全の状態になると致死的な症状を起こすことになりますので、これに対する治療(腎代替療法)が必要になります。治療法には、透析療法腎移植の2つがあります。透析療法には血液透析と腹膜透析がありますが、現在末期腎不全の患者の殆どは血液透析を行っています。透析療法とは腎臓に代わって人工的に体の血液を浄化させる働きを代行する方法です。これによって水分・電解質および毒素を除去することができ、生命を維持することは可能になります。しかし腎機能を回復させる方法ではなく、また腎臓の機能を完全に補うものではありません。従って、生涯にわたり継続する必要がありますし、長く続けていると補えない腎機能の障害から合併症を生じてきます。また血液透析であれば通常週3回、4-5時間の通院が必要ですし、水分・食事の制限もあります。仕事や旅行、妊娠・出産など社会生活にも影響があります。 現在全国で約30万人の透析患者がおり、毎年1万人ずつ増加しています。沖縄県では約4000人の透析患者いて、人口比率における患者数では13,000人の福岡県を上回っています。

都道府県別透析患者数

長期透析患者の合併症

1.心血管系障害 2.免疫不全 3.腎性貧血 4.皮膚瘙痒症 5.透析困難症 6.腎性骨症(腎性骨異栄養症) 7.悪性腫瘍 8.透析アミロイドーシス 9.多嚢胞化萎縮腎

一方、腎移植とは腎臓の機能が低下した人のために、新しい腎臓を手術で移植することによって全ての腎臓の機能を回復させる治療法です。移植を行うと失われた腎機能のほぼすべてを回復してくれます。食事や水分の制限もほとんどありませんし、腎機能が落ち着いていれば月1回くらいの通院になります。生活の制限もあまりないので、健常人とほぼ同等の社会生活が可能です。しかしながら、手術を受けないといけませんし、拒絶反応を抑えるために免疫抑制剤を飲み続ける必要があります。また誰から腎臓を提供してもらうか(ドナー)が最大の問題となります。 どちらの治療を選択するかは、医学的条件にもよりますが、個人の体の状態や年齢、性格、またライフスタイルなどを考慮して決定されます。移植を行う場合、多くは透析治療を経て移植を選択されていますが、最近は透析を行わずにまず腎移植を施行するpre-emptive移植も増えてきています。

腎移植について

①腎移植のメリット

腎移植を行うことで得られるメリットはいくつもあります。透析が不要になることで、通院の束縛がなくなり、水分・食事の制限がほぼなくなりかなり生活が自由になります。また透析による合併症がそれ以上進行することもありません(すでに生じている合併症が元に戻る訳ではありません)。女性であれば妊娠・出産の可能性が高まります。国が透析患者に費やしている医療負担も軽減されますので医療経済にも貢献します(移植をしても更正医療は適応されます)。しかし何より最大のメリットは、移植を受けると長生きができることです。透析導入後の10年生存率(10年後に生きている人の割合)は約40%です。15年生存率は30%しかありません。これは透析を続けることで合併症が進行し、全身状態が悪化していくことに起因しています。一方で腎移植を受けた方の場合、10年生存率85%、15年生存率79%と透析を続けた方の2倍以上の生存率が得られます。腎移植は、腎不全の根本的治療法なのです。

透析導入後の生存率の推移

生体腎移植、献腎移植の生存率

生存率(透析VS腎移植)

腎移植のメリット

1.透析治療からの脱却(時間的、精神的自由) 2.社会復帰、食事・生活制限の緩和 3.生命予後の延長(長生きができる) 4.透析合併症の進行を遅らせる 5.医療経済への貢献 6.妊娠・出産の可能性

②腎移植のデメリット

移植を行う上で問題となる点もいくつかあります。まず手術を受けなければいけないということと、少ないですが手術による合併症が生じることもあります。臓器の拒絶反応を抑えるために免疫抑制剤を内服する必要がありますが、薬の副作用や免疫力低下で感染症に弱くなるといった心配もあります。生活が自由になる代わりにしっかりとした自己管理ができないと腎機能に影響します。また現在の医学では移植した腎臓を永久に持たせることはできません。いずれは機能が廃絶し透析に戻る可能性はあります。しかしながらこれらの合併症や副作用を最低限におさえ、腎臓に優しい生活環境を心がけてできるだけ長く機能を維持出来れば、人生の大半を透析なしで元気に過ごすことができます。

移植の問題点

1.手術を受ける必要がある(耐術性の問題) 2.免疫抑制剤の副作用 3.感染症の危険性 4.自己管理の徹底 5.精神的不安定 6.移植腎は永久ではありません→透析再導入

③腎移植の種類(献腎移植と生体腎移植)

腎移植の最大の問題は、腎臓を誰からもらうかということです。この腎臓提供者をドナー、移植を受ける人をレシピエントといいます。腎移植はドナーの種類によって、献腎移植と生体腎移植に分けられます。通常、腎臓は1個あれば、それだけで体の機能を十分に維持することが可能です。

(1)献腎移植

死亡後に本人もしくは家族の希望で善意の腎臓提供があった場合に、あらかじめ日本臓器移植ネットワークに登録している同じ地域の患者の中で、最も優先順位の高い方に腎臓が移植されます。腎臓が2個あるため一人の提供で2名の登録患者が移植を受けることができます。この献腎移植はネットワークが認定した施設でのみ行われます。

(2)生体腎移植

患者の親族の中に自らの意思で腎臓の提供を希望されている方がいる場合、その方の全身状態および腎機能が医学的に問題ないことを条件に、1個の腎臓を摘出して移植を行います。診療体制が整っている病院であれば施行可能です。日本移植学会の倫理指針では、生体移植は親族からの提供に限るとされており、親族とは、6親等以内の血族、3親等以内の姻族(配偶者側の親族)と定義されています。

どちらを選ぶかは個々の環境によりますが、現在の大きな問題として、移植を希望して登録されている患者はたくさんいますが死亡後に臓器提供を希望される方が少なく、移植を受けるまでの待機期間が非常に長くなっている状況があります。一方で生体腎移植の場合、早期に移植が可能ですが、安全性に最大限配慮しているとはいえ健康な方を手術しなければならないという点が最も問題になります。

④日本での腎移植の状況

我が国での移植医療の状況はどうなっているのでしょうか。現在、全国で約30万人の透析患者がおり、約12,000人が献腎移植に登録しています。2009年に全国で1302例の腎移植が行われ、そのうち献腎移植(脳死下提供も含む)は、189例(14.5%)、生体腎移植は1113例(85.5%)でした。献腎での提供者が少ないため、透析患者が体の機能を回復するためにはそのほとんどを生体腎移植に頼らざるをえないのが実状です。2009年腎移植を行った施設は全国で132施設あります。そのうち90施設(68%)が年間9例以下で、10例以上施行した施設は42施設(32%)。20例以上に限ると17施設(13%)しかありません。しかし移植件数でいうと年間10例以上の42施設で全体の78%をこなしています。つまり少数の施設がたくさんの患者を治療している状態であり、そのことが全体のレベルアップ、安定した成績につながっています。

わが国の透析患者、献腎移植登録者および腎移植件数の推移

2009年全国統計

移植後の腎臓がどれくらい機能するかは、生着率(移植後透析導入になっていない人の割合)で表します。生着率は年代毎で格段に向上しています。これは第一に免疫抑制剤の進歩が挙げられます。以前には存在しなかった薬剤が次々に開発され、拒絶反応を抑えることで長期間移植腎機能を保持することができるようになっています。2000年代以降で、生体腎移植の5年生着率は91%であり10年生着率もおそらく80%を超えると見込まれています。

生着率

⑤腎移植の適応について

自分は移植を受けられるのだろうかと心配している人はいませんか。基本的には、腎不全患者であって自らの意思で移植を希望されている方全員が、移植の対象となります。これに加えて生体腎移植の場合は、自らの意思で腎臓の提供を希望されている家族がいることが条件となります。夫婦間の移植であったり、ドナーと血液型が違っていたり、原疾患が糖尿病であったり、以前に移植を受けて透析に戻ってしまった人なども移植を受けることは可能です。また年齢の上限はありませんが、術前検査で手術可能と判断されれば移植を行えます。

ただし以下のような方は移植をすすめることができません

・治癒していない、または治療後間もない悪性腫瘍(癌など)を持っている場合 ・全身麻酔を含めた大きな手術に耐えられない心機能や肺機能であった場合 ・慢性または活動性の感染症を持っている場合 ・性格や気質、精神疾患により通院したり内服などの自己管理ができない場合 ・その他医学的に移植が不適と判断された場合(クロスマッチ検査陽性など)

⑥拒絶反応について

移植された腎臓はたとえ家族から提供されたものであっても厳密にいうと他人のものなので、体に侵入した異物(細菌やウイルスなど)を排除しようとする「免疫」というシステムが働きます。通常の生体では体を守るための大変重要な機構ですが、移植臓器の場合これを拒絶反応といいます。拒絶反応がおこってしまうとせっかく移植した腎臓が機能しなくなってしまうので、免疫抑制剤を内服することで免疫機能を抑制し拒絶反応を抑えるわけです。従って移植腎が働いている限りは、免疫抑制剤を内服し続ける必要があります。また拒絶反応が起こっても早期に診断、治療ができれば殆どの拒絶反応は治療することが出来ます。最近は免疫抑制剤の進歩により、治療はもちろん拒絶反応自体の発生率もかなり低下しています。 しかしながら重度の拒絶反応や治療抵抗性の拒絶反応の場合、おさまっても腎機能が低下したままであったり、そのまま機能廃絶にいたる場合もあります。また長い期間をかけて徐々に腎機能が低下する慢性拒絶反応については現在でも有効な治療法がなく、移植腎が永久に持たない最大の原因になっています。

移植腎が廃絶する理由

移植腎が廃絶する理由

⑦免疫抑制剤について

免疫抑制剤は副作用の多い薬です。拒絶反応を抑えようとたくさん飲み過ぎると副作用で困ることになりますし、少なければ拒絶反応が起こってしまいます。従って移植医は拒絶も副作用も起こさない最も適切な量で薬を処方します。自己判断せず用法用量をきちんと守って内服することが重要です。副作用のほとんどは内服量の調節により予防可能です。以下に主に使用される免疫抑制剤を示します。拒絶反応にはリンパ球が大きく関与しますので、このリンパ球の働きを抑える薬剤がメインになります。

(1)カルシニューリンインヒビター(CNI)

◎ネオーラル (シクロスポリン)

リンパ球の増殖を強く抑制することにより免疫抑制効果を発揮します。免疫抑制療法のベースとなる薬剤です。副作用としては、腎障害、多毛、手指振戦、歯肉肥厚、高血圧などがあります。特に、内服が多すぎると腎機能障害が出現するため頻回に血中濃度を測定しながら内服量を調整する必要があります。

◎プログラフ/グラセプター (タクロリムス)

シクロスポリンと同様に、リンパ球の増殖を強く抑制することにより免疫抑制作用を発揮します。本薬剤はシクロスポリンの約10倍から100倍の作用があると言われています。副作用としては、腎障害、心毒性(不整脈、胸痛など)、糖尿病、消化器症状(嘔吐、下痢)、高尿酸血症などがあります。この薬剤も血中濃度を測定しながら内服量を調整します。

(2)代謝拮抗剤

◎セルセプト(MMF)

リンパ球の増殖を抑制し免疫抑制効果を示します。非常に強力な薬剤で、特に重症の拒絶反応を引き起こす抗体の産生を抑制する作用があります。副作用としては、消化器症状(下痢、嘔吐)、食欲不振、貧血、白血球減少などがあります。作用が強すぎると感染症のリスクが増加しますので減量などの調整が必要になります。

◎ブレジニン (ミゾリビン)

セルセプト同様にリンパ球の増殖を抑制します。作用・副作用ともセルセプトほど強くはありません。副作用として、白血球減少、食欲不振、消化器症状(嘔吐、口内炎)などがあります。

(3)ステロイド

◎メドロールまたはプレドニン

免疫反応全体に抑制効果を持つ極めて重要な免疫抑制剤で、急性拒絶反応では治療の主役となります。ですが長期服用の副作用として顔が丸くなったり、肥満、糖尿病、白内障、胃潰瘍、大腿骨頭壊死など多彩な症状を引き起こすため、できるだけ減量するようにしています。

(4)シムレクト (バシリキシマブ)

注射薬で移植手術当日と術後4日目の2回のみ投与します。直接的な副作用はあまりなく、投与後アレルギー症状をおこす場合もありますが殆ど稀です。リンパ球の活性化を強力に抑制する作用があり、2回の投与で効果は約1ヶ月半持続します。頻度の多い移植後早期の拒絶反応を抑えるのに非常に効果的です。 それぞれの免疫抑制剤は拒絶反応の違った段階に作用するようになっており、組み合わせて使うことによって、より有効に拒絶反応を抑制できるように工夫されています。また薬剤を組み合わせることにより各薬剤の使用量を減らすことが出来、副作用を予防することもできます。上記の薬剤の中から通常2-3剤を組み合わせて内服してもらいます。 また移植後ずっと同じ量の薬を飲み続ける訳ではありません。移植後3ヶ月は特に拒絶反応が起こりやすい時期ですので、しっかりとした免疫抑制が必要です。しかし時期がたち特に移植後1年を過ぎるようになると拒絶反応の頻度はかなり減りますのでそれ程たくさんの免疫抑制剤は必要ありません。従って副作用軽減のため薬の量は最小限まで少なくします。そうなると免疫力がアップし感染症のリスクも低下します。

免疫抑制療法プロトコール

⑧移植後の生活について

移植がうまくいくと健常者の方とほぼ同じ生活が送れます。旅行や仕事、スポーツ(格闘技系は除く)、女性であれば妊娠・出産などほとんどすべての事柄が可能です。いくつかの注意すべき点がありますが、これらの多くは一般的な健康管理上必要なことで特別なことはあまりありません。毎日必ず免疫抑制剤を内服すること、腎臓に優しい生活習慣・食事を心がけること、欠かさず通院して医師のチェックをうけることなどです。移植後早期は、こまめな通院検査が必要ですが、腎機能が落ち着いた状態になると、1-2ヶ月に一度の通院でよくなります。ただ移植腎が機能している間は、5年、10年たっても免疫抑制剤を飲み続けないといけませんので長期の通院が必要になります。

⑨移植の費用について

移植にはすごいお金がかかるのでは心配している人もいるでしょう。日本の病院で腎移植を行う場合、生体でも献腎でも保険診療になります。腎移植に関する医療費は健康保険や各種医療保障制度が利用できるので、自己負担額は低額で済みます。術前に透析を行っている方の場合、ほとんどが腎臓機能障害1級の身体障害者手帳を持っており、自立支援医療(更生医療)の助成が受けられます。また移植後も1級の等級は継続されますし、術前3-4級で認定されている場合でも移植後は1級になります。しかし障害年金を受給している方の場合、移植後しばらく(最低1年)は継続されますが、経過が良好で腎機能が安定していれば、減額もしくは支給停止になります。 一方ドナーについては、一部を除いた術前検査の費用、および移植のための入院・手術の費用は全てレシピエントの医療費に含まれますので、ドナーに直接医療費が請求されることはありません。ただし、移植の医療費に含まれないが、手術のために必要と判断される検査については、別途ドナーに請求することもあります。さらに何らかの理由で移植に至らなかった場合は、ドナーの検査を保険請求できませんので、かかった検査費用は全額自己負担になることを御了承ください。移植後はドナーも健康管理のため定期的な通院をお願いしています。その時の医療費は自分の健康保険での支払いとなります。

当院での移植医療について

①当院での診療体制

当院は全国でも有数の実績を有する九州大学臨床・腫瘍外科と診療提携をしています。直接移植医の派遣を受け、2名の日本臨床腎移植学会認定医が勤務し患者の診察にあたっています。術前後の検査、手術方法、薬剤の投与方法などを同一のものにし、全面的なバックアップをしてもらうことで安全で質の高い医療を提供できるようにしています。また日本一の症例数を誇る東京女子医大からも移植経験のある若手医師が国内留学して診療に参加しています。さらに院長を筆頭とする県内トップレベルの腎臓内科医も積極的に協力して患者管理を行っています。

全国腎移植症例数

当院での診療体制の特徴として、院内のあらゆる職種が参加した移植推進員会を設立し、病院全体で移植医療への取り組みを行っています。移植推進の4本柱として、 1) 生体体腎移植 2) 腎移植 3) 臓器提供 4)教育啓蒙・研究発表 を掲げ、これらを委員会のもと一元化して活動を行い、移植医療を推進しています。

②生体腎移植への取り組み

生体腎移植のメリットは早期に手術が受けられること、手術の予定が決められるので十分な検査、準備ができることがあります。そのため手術の安全性が増し、成績も良好です。最近は免疫抑制剤の進歩と相まって、全くの他人である夫婦間の移植や、血液型の違う移植、二次移植なども施行できるようになり、その成績も通常の移植と変わらない状況です。最大の問題点は健康人であるドナーを手術することですが、その安全性や体の負担には最大限の配慮をしています。

(1)生体腎移植ドナーの基準

1. 身体的基準 ・腎機能が良好であること。腎臓に病気がないこと。 ・活動性の感染症がないこと ・全身性の悪性腫瘍(癌など)がないこと ・特殊なウイルス感染がないこと(HIV、HTLV-I、HBVなど) ・全身状態(心機能や肺機能など)が手術に問題ない ・年齢は70歳以下が望ましい

2.倫理的・社会的基準 ・患者の親族であること(6親等以内の血族、3親等以内の姻族) ・未成年者や精神障害者など自らの意思を明確にできない場合は除く ・臓器提供があくまでも自発的な意思であり、強制や金品の授受などを伴わない

ドナーとの関係性を確かめるために、本人確認や戸籍謄本の提出などをお願いしています。また院内移植コーディネーターとの面談でドナーの臓器提供が自発的意思に基づくものであることを確認します。

(2)術前検査

移植手術で大事なことは安全に治療を行うことです。移植を行うことで、却って重大な不都合が生じることは避けなくてはいけません。そのため移植を希望される方には術前検査を行い、移植手術が安全に行えるかどうかを確認する必要があります。検査の結果によっては、移植前に治療を必要としたり、残念ながら移植ができないということもあり得ます。以下に必要な検査を説明します。

◆ダイレクトクロスマッチ検査 まず最初に行う検査で、ドナーとレシピエント2人の血液を直接混ぜ合わせて反応が起こるかどうか見るものです。結果が陽性と判断された場合は、移植後に激しい拒絶反応が起きることが予想され、この組み合わせでは移植はできません。ただしほとんどの方は陰性です。血液を東京に送って調べるため結果がでるのに約1週間かかります。約38000円の実費がかかります。(これは後日腎移植に至った場合、返金されます)

◆血液検査・尿検査 一般的な健康状態を調べます。栄養状態、肝機能、腎機能、血糖、コレステロール、中性脂肪、尿酸値、貧血、尿糖、尿蛋白の有無などを見ます。また症状はなくても特殊なウイルス(HIV、HTLV-1、HBV)を体内に持っている場合は、術後発病する事があり移植はできません。ダイレクトクロスマッチ検査の採血のとき同時に行います。

◆ドナー検査 ドナーの検査の目的は主に3つあります。ドナーは健康であることが必須条件で、腎臓提供によって健康が損なわれる可能性がある場合には、ドナーにはなれません。

1.術前一般検査 全身麻酔の手術が安全に行えるか検査します。 心電図、肺機能、レントゲン検査、心エコー (循環器内科や呼吸器内科の先生に診察してもらう場合もあります)

2.腎機能検査 腎臓が1つになっても大丈夫か確認します。また左右どちらの腎臓を提供するか決めます。 (原則機能が良い方をドナーに残しますが、左右ほぼ同じ機能なら通常は左腎を摘出します) 腎シンチグラム、クレアチニンクリアランス(24時間蓄尿)

3.癌検診 体内に癌が潜んでいる場合、移植によって癌細胞も移る可能性があります。 胸部CT、腹部造影CT、胃カメラ、大腸カメラ 女性:乳癌検診、子宮癌検診  男性:前立腺癌検査(採血) ※ 癌が見つかった場合は、まず癌の治療が必要ですのでドナーにはなれません。 ※ 癌の完治が確認された後には、ドナーになれます。

◆レシピエント検査 レシピエントはできるだけ良い全身状態で手術に臨む必要があります。必要であれば術前に治療を行ってから移植を行う場合もあります。また術後免疫抑制剤を内服するため免疫力低下を想定した術前準備が必要になります。

1.術前一般検査(特に心機能) 全身麻酔の手術が安全に行えるか検査します。特に透析患者では心機能が低下している場合が多く、十分な評価が必要です。 心電図、肺機能、レントゲン検査、心エコー、冠動脈石灰化CT、循環器内科受診 (負荷心筋シンチや心臓カテーテル検査まで必要になる場合もあります)

2.感染症検査 症状はなくても体内に細菌が潜んでいる場合、免疫抑制剤内服によって菌が増殖し体中に広がる可能性があります。致命的になることもあるので術前に治療が必要です。 耳鼻科受診、眼科受診、歯科受診、結核検査

3.癌検診 症状がなくても体内に癌が潜んでいる場合、免疫抑制剤内服によって癌細胞が急速に増大する可能性があります。 胸部CT、腹部造影CT、腹部エコー、甲状腺エコー、胃カメラ、大腸カメラ 女性:乳癌検診、子宮癌検診  男性:前立腺癌検査(採血)

4.膀胱機能検査 移植した腎臓は元々の膀胱につなぎます。現在は腎不全により尿が少ないため膀胱はあまり働いていませんが、術後十分働いてくれるか確認しておきます。 泌尿器科受診、膀胱造影検査 (膀胱から元々の腎臓への逆流がひどい場合は、移植手術時に原腎を摘出する場合もあります)

5.その他 頸動脈エコー、骨密度検査、糖尿病検査 ※ 癌が見つかった場合は治療が必要ですので移植はできません。 ※ 癌が完全に治った後には、移植をうけることができます。

術前・術後CT画像

上記の検査が全て問題なければ移植手術が可能です。ドナーの検査費用は、後に移植を行った場合、保険でまかなわれるため本人に直接請求することはありません。しかしながら何らかの理由で移植に至らなかった場合には、それまでの検査費用を実費で請求させていただきますので事前に御了承ください。 また移植の保険でまかなわれるドナー検査は基本検査のみです。検査で病気が疑われ精密検査が必要となる場合は、(その検査費用に限って)自己負担での診療となりますので御了解ください。また人間ドック(癌検診)を受診して癌疾患がないことを確認してもらいます。

(3)特殊な移植

1.血液型不適合移植

移植の血液型がA→B、B→A、A→O、B→O、AB→O、AB→A、AB→B (ドナー→レシピエント)であった場合を血液型不適合移植といいます。ドナーの腎臓にある血液型抗原と、レシピエントの血中にある抗A抗B抗体(A型抗原、B型抗原に反応する物質)が反応を起こし、激しい拒絶反応を起こします。そのままでは移植ができないので、術前にレシピエントの抗体を予め除去する処置を施してから移植を行います。 一方、O→A、O→B、O→AB、A→AB、B→ABの場合、血液型は違いますがこの反応が起きません。従って通常の血液型適合の移植と同じように行なっています(これを血液型不一致移植といっています)。現在は、治療の安全性、確実性が向上したため全国の生体腎移植の約20%がこの不適合移植であり、その成績も通常の移植と遜色ありません。また術前の処置が必要になるため、緊急手術である献腎移植の場合にはすべて適合移植で行うようになっています。当院でもH23.9月に1例目を施行し、すでに3例以上を行っていますが、いずれも経過は良好です。

2.糖尿病性腎症

腎移植は糖尿病を治す治療ではありません。移植した腎臓にも糖尿病の影響がでることを心配して、以前は糖尿病が原因の透析患者の移植はあまり行われませんでした。しかし現在透析導入の原因第1位は糖尿病患者であり、しかも透析開始後の予後は、他の原因で透析になった患者より著しく悪いという結果があります(10年生存率23%、15年生存率10%)。従って救命の観点からすれば、糖尿病透析患者こそ腎移植が必要ということになります。最近は糖尿病性腎症の移植も全国的に増加していますが、術後厳密な血糖コントロールが必要になります。当院でも移植患者の33%は糖尿病性腎症の患者です。

3.二次移植、高感作レシピエント

以前に移植を経験して透析再導入になった患者や、SLEなどの自己免疫性疾患が原因の患者は、他者に対する抗体が過剰に産生され反応性が高まった状態になっていることがあります(これを高感作レシピエント:high sensitizerといいます)。この場合、そのまま移植を行うと高頻度で激しい拒絶反応が起こります。従って、術前にドナーとのクロスマッチ検査を精密に行う必要がありますし、結果によっては移植が不可能と判断される場合もあります。血液型不適合移植に準じた処置を行い、抗体を除去することで移植を可能にできることもありますが、術後拒絶反応のリスクはやはり高いものになります。現在、通常の腎移植であればほぼ問題なく行えるほど移植医療は進歩していますが、この高感作レシピエントについてはまだ克服すべき課題が残されています。

(4)レシピエント手術

術前準備

移植手術が決まった後のレシピエントの流れを見てみましょう。当院では火曜日に移植手術を行いますので、前週からは透析日を月水金にしてもらいます。通常の血液型適合の移植の場合、手術1週間前から免疫抑制剤を内服します。当初は下痢、嘔気など副作用が現れることもありますが、症状に応じて治療します。ほとんどは内服を続けるうちに症状が改善していきます。前週の土曜日に入院です。入院後は採血を行い、血中濃度を測定して免疫抑制剤の量が適切であるか確認します。結果で量を増減することもあります。月曜日に透析を行いますが、移植後順調に尿が見られればこれが最後の透析になります。また全身麻酔を行ってくれる麻酔医の診察もあります。夕方に下剤を内服して、翌日火曜日はいよいよ手術の日です。 血液型不適合移植の場合、血液型に反応する物質である抗A抗B抗体を術前に体から除去しておく必要があります。抗体の量によって変わりますが、免疫抑制剤の内服は術前2-4週間前から開始し、入院も手術1-2週間前になります。入院後は抗体産生を抑えるリツキサンという薬を投与し、血漿交換を何度か行って抗体の量を手術までに十分減らしておく必要があります。手術方法や術後の経過は通常の移植と変わりません。

手術当日

早朝免疫抑制剤を内服し、9時前には病棟から手術室に向かいます(ドナーは8:30)。麻酔などの手術準備が行われ、10時過ぎ頃に執刀となります。通常は右下腹部の後腹膜(腸骨窩)に移植を行いますので、約12-15cmの皮膚切開をおき、脚に向かう血管である外腸骨動脈および静脈を露出します。ドナーから摘出された腎臓が届くと、腎動静脈をそれぞれ外腸骨動静脈に端側吻合します。吻合が終了して腎臓に血液が流れだすと、生体腎移植の場合通常30分内には尿の流出が認められるようになります。尿管を自己の膀胱に吻合し、腎臓を適切な位置に納めれば手術は終了です。平均的には約4時間程の手術で、出血も100-300mlくらいです。特殊な状況を除いて元々の腎臓は摘出しません。また腹膜透析の場合は、尿の流出を確認して透析用のカテーテルは抜去します(移植後の腹膜炎などを予防するため)。術後はICUに入室して管理します。

移植手術

移植手術

術後経過

手術翌日から水分を開始し免疫抑制剤を内服します。術後2日間は移植した腎臓保護のためベッド上安静となります。創痛よりも腰痛を訴える方が多いです。2日目にICUから外科個室病棟に移ってからは離床しても構いません。食事も開始になります。術後尿量を保つため点滴を継続しますが、4日目には終了して点滴を抜きます。なるべく水分をたくさん摂取してもらい、尿をたくさん出すことで血清クレアチニン値が速やかに低下し、術後1週間では安定した腎機能が得られるようになります。その頃にはほぼ自由に動けるようになります。その後は術後2-4週間ほど免疫抑制剤の調節を行い、患者さんが自分の状態をしっかり自己管理できるようになれば退院となります。当院では退院まで術後平均23日です。

生体腎移植術後経過

退院後通院

退院後3ヶ月までは2週間ごとの通院です。毎回血液検査を施行し、腎機能、薬剤血中濃度、全身状態をチェックします。3ヶ月後に移植した腎臓の状態を確認するため腎生検を行います。通常1泊2日の入院です。結果が問題なければ、免疫抑制剤の減量を行い、通院も月1回になります。術後半年も過ぎれば拒絶反応が起こる心配も減ってきますが、1年間は腎機能不安定、体調不良などで入院加療を要することもしばしばです。術後1年目に腎臓の状態を見るために腎生検を行います(当院では腎臓の状態を確実に把握するため術後3ヶ月目、1年目の腎生検は全例で施行しています)。術後1年を過ぎるとほぼ安定した腎機能が得られ、それに伴い日常生活も安定してきます。定期的な通院・検査と確実な免疫抑制剤の内服を行えれば、通常の方とかわりない生活が可能になります。これまで当院で移植を行なった患者さんで透析に戻った方はまだいません。皆さん元気に社会復帰しています。

(5)ドナー手術

術前準備

一方ドナーの方の経過を見てみましょう。ドナーは術前特別な準備はいりません。手術に備えて体調を整えておいてください。入院は手術の前日月曜日です。麻酔医より麻酔の説明を受け、下剤の内服を行います。夜から点滴を行い、腎臓が活発に働くようにしておきます。

手術当日

8:30前には病棟から手術室に向かいます(レシピエントは9:00)。麻酔などの手術準備が行われ、9時過ぎ頃に執刀となります。手術の負担が少なくなるように当院ではカメラを使った鏡視下手術を行っています。臍下に約6cmの皮膚切開をおき、側腹部に1cm大の創を3ヶ所加えて手術を行います(用手補助後腹膜腔鏡下腎臓摘出術:HARS)。腎機能に左右差がなければ、移植に有利な点を考慮して通常左腎を摘出します(腎静脈が長く採取できるため)。手術時間は約3時間で出血は少量です。輸血を行うことはまずありません。術後は外科個室病棟に戻ります。麻酔が完全に覚醒すれば飲水可能です。

ドナー手術

術後経過

翌日には離床可能です。創痛があれば鎮痛剤で対処します。食事も開始します。腎機能保持のため2日目までは点滴を行います。終了後はなるべく水分を摂ってもらいます。スムースに動けるようになれば退院です。早い人で4日目に退院した人もいますが、平均は翌週の月曜日、術後6日目で退院です。創部は吸収糸による埋没縫合を行い抜糸は不要です。 ドナーは元来病人ではないため、手術により健康に影響することがあってはならないと考えています。術後合併症なく無事に退院させることが何より大事です。当院ではこれまでドナーに創感染以外の重篤な合併症は認めていません。

退院後経過

痛みや体調に問題がなければ、早期の日常復帰、仕事復帰は可能です。ただし腎臓が一つになっていますので、術後の健康管理には気をつけてもらいます。片腎になったからと言って病気になりやすくなることはありません。ただし腎臓に影響する病気(高血圧、高脂血症、肥満、糖尿病など)になった場合、通常の方よりは注意が必要です。従ってこれらの病気を予防するために当院では、術後専門の腎臓内科医がドナーの定期観察を行っています。これまで術後にドナーが腎不全となった症例は経験していません。また年に一度は外科外来にて創部のチェックもしています。数年も経つと、ほとんどの傷は目立たないほど綺麗に治癒しています。

③献腎移植への取り組み

当院でもH23.3月から献腎移植施設に認定されました。献腎移植を受けるためにはあらかじめ日本臓器移植ネットワークに登録する必要があります。現在沖縄県では、県立中部病院、琉球大学病院、八重瀬会同仁病院、友愛会豊見城中央病院の4施設が献腎移植を行える施設に認定されており、県立中部病院と豊見城中央病院で新規登録をすることができます。

(1)献腎登録について

当院で登録を行う場合について説明します。まず透析施設で登録申請書類を用意してもらいます。その後、当院の地域連携室に電話して受診の予約を取って下さい。基本的に月曜日の朝になります(離島の方は配慮します)。血液型、感染症、体調チェックのための血液検査および心電図、レントゲン検査を行い、移植医の診察を受けます。移植可能と判断されれば、移植医の署名の後、書類を臓器移植ネットワークに郵送します。この受診の時、通常の診察料、検査料に加えて、登録に必要なHLAタイピング検査の費用25,000円を別に頂きます。ただし、このHLA検査費用については沖縄県腎臓バンクから20,000円の助成制度がありますので、そのための申請書類を受診時にお渡しします。最後に、ネットワークに登録料30,000円を振り込めば登録完了です。後は、自分に適合するドナーが出るのを待つことになります。 また登録時にどこで移植手術を受けるかを決めておきます。しかし後から自由に施設を変更することが可能ですので、既に登録されている方で当院での移植を希望する方がいましたら、変更届けの書類がありますので御連絡ください。毎年登録更新の書類がネットワークから送られてきますので、移植施設を受診して移植医のサインをもらって返送してください。この時更新料5,000円と採血検体を一緒に送ります。待機期間が長期になると透析の合併症で体の状態が悪くなってきます。透析施設で定期検査を受けて体調を維持してください。移植医が手術できる体の状態でないと判断した場合、登録の更新ができないこともあります。

(2)レシピエントの選定

手術の日は前触れもなく突然やってきます。臓器提供を希望するドナーの方が現れると、ネットワークに連絡が入り、レシピエントの選定が始まります。種々の条件をポイント化し、優先度の高い順にレシピエントリストが作成されます。お一人のドナーから二人のレシピエントに腎臓が移植されますので、上位2名が移植を受けることが出来ます。 現在、献腎移植のレシピエント選定基準は以下のようになっています。

(1) ABO型血液型が一致すること (2) リンパ球交叉試験が陰性であること (3) 優先提供となる親族が事前に登録されている場合は優先される (4) 以下のポイントの合計が高い順

Ⅰ 県内の患者 12p  同じブロック(例えば九州沖縄地区内の患者) 6p Ⅱ HLA適合度 0~14×1.15p Ⅲ 待機日数 1年=1p Ⅳ 16歳未満 14p  16-19歳 12p

常に上位2名の方が移植を受けられるわけではありません。リスト上位でも当日体調不良で入院していたり、合併症が悪化して治療中である場合は、移植医が手術には不適当と判断する場合もあります。また当日本人とどうしても連絡がつかず、次の人に順番が回ってしまうこともあります(臓器の保存に時間制限があるため早くレシピエントを決める必要がある)ので、必ず連絡が取れる番号を登録してください。夜中に電話がかかってくることも多いです。

(3)献腎移植が決まったら

リストの上位者に登録施設の移植医から手術を受ける意思確認の電話が入ります。手術希望であれば、直ちに移植病院を受診することになります(献腎移植は緊急手術です)。急いで、手術のための検査を行い、必要であれば透析を行ないます。医師から手術の説明を受けたあと免疫抑制剤の内服を開始して、臓器が搬送されてくるのを待ちます。臓器の摘出はドナーの方が亡くなったあとに始まります。従っていつ移植手術になるかは分かりません。入院して直ちに手術になることもあれば、しばらく待つ場合もあります。 移植手術そのものは生体腎移植の場合と大きくは変わりません。ただし、死戦期に腎臓がダメージを受けていることが多く、移植後腎機能が回復するのに時間がかかります(Delayed graft function:DGF)。生体腎移植であれば移植直後から尿が作られ透析は不要になるケースがほとんどですが、献腎移植の場合、数日から数週間は透析をしながら尿が作られるのを待つことになります。稀にですが、最後まで腎機能が回復せず移植をしたものの透析から離脱できないこともあり、これをprimary non function(PNF)といいます。ドナーが高齢であったり死戦期でのダメージが大きすぎたりする場合に見られることがありますが、これを予測することは大変難しいです。

(4)献腎移植の現況

現在献腎移植を希望してネットワークに登録している人は全国で約12,000名います。一方、臓器提供をされる方は年間約100名程で、献腎移植の件数は毎年200件ほどです。本邦での腎移植件数は年々増加していますが、生体腎移植の増加によるもので献腎移植の件数はほとんど増えません。そのため献腎移植の待機期間がどんどん長くなっています。現在は10年以上待たないと移植が受けられない状況です。

④臓器提供促進への取り組み

献腎移植を推進するにはドナーの増加が不可欠です。当院では院内での臓器提供促進にも取り組んでいます。ただし、この臓器提供活動は移植を待つレシピエントのためだけに行なっているのではありません。

(1)移植に関する4つの権利

移植については患者の4つの権利が保証されています。それは、ドナーの臓器を提供する権利、臓器を提供しない権利、レシピエントの移植を受ける権利、移植を受けない権利。そのどれもが正当な権利であり、守られるべき権利です。この中で、ドナーの臓器を提供する権利が十分保証されていない場合があります。臓器提供は生前の患者の意思および家族の希望で行なわれます。しかし、通常臓器提供が行なわれる状況は、患者および家族にとっては不慮の出来事であり、まずは救命に全力が尽くされます。「死」という事態は容易に理解できる状況ではありません。その中で医療にも限界があり「死」が不可避となった時、その現実を家族に説明します。その場合に、臓器を提供する権利が発生しますが、通常家族に臓器提供を考える余裕はありません。事前に明確に本人が意思表示している場合を除いて、医療者側から家族に意思を確認してあげないと、この権利は保証されないことになります。これをオプション提示といいます。もちろん断るのも提供するのも全くの自由であり、何の束縛も受けません。また断ったことで現在の治療に影響を受けることもありません。しかしオプション提示によって臓器提供にいたるケースもあり、最後に患者の希望を叶えてあげることにもつながります。

移植に関する4つの権利

(2)当院での取り組み

当院では、患者の臓器提供の権利が損なわれないように、適応のある患者にはもれなくオプション提示(意思確認)が行なわれるように配慮しています。しかし担当医から臓器提供の意思確認を切り出しにくいこともあります。その場合、沖縄県が作成したオプション提示のパンフレットを家族に渡すだけですむようにしています。また新しい健康保険証や運転免許証の裏面にも意思確認の項目がありますので皆さんも一度ご確認ください。全国世論調査では国民の約4割が死後臓器を提供してもよいと答えています。しかし年間の提供者が100名に満たないのは、現場できちんと意思の確認が出来ていないことが原因の一つと考えられます。臓器提供が増えれば、それで命を救われる患者さんがたくさんいます。

(3)臓器提供の実際

残念ながら最善を尽くしても救命できないとなった場合、最後にしてあげられることとして臓器提供の希望を家族に確認します。もし患者本人の意思が不明でも家族の希望があれば提供は可能です。臓器提供希望もしくは前向きに考えたいという場合、病院は県コーディネーターに連絡して来院してもらいます。コーディネーターは家族に臓器提供についての詳しい説明をします。家族は、この時点で断ってもかまいません。またその後、患者が亡くなるどの過程でも臓器提供を断ることができます。一度希望すれば話が決まってしまうわけではありませんので安心してください。臓器提供はあくまで善意で行なうものですので、見返りの金品などはないことをご了承ください。一般的にドナーになるには以下の条件が必要です。

臓器提供者(ドナー)適応基準

1.以下の疾患又は状態を伴わないこととする。 (1)全身性の活動性感染症 (2)HIV抗体、HTLV-1抗体、HBs抗原などが陽性 (3)クロイツフェルト・ヤコブ病及びその疑い (4)悪性腫瘍(原発性脳腫瘍及び治癒したと考えられるものを除く)

2.以下の疾患又は状態が存在する場合は、慎重に適応を決定する。 (1)血液生化学、尿所見等による器質的腎疾患の存在 (2)HCV抗体陽性

3.年齢:70歳以下が望ましい。 従って、高齢の方や、癌で亡くなってしまう方、敗血症で亡くなってしまう方は希望があっても臓器提供はできません。また臓器摘出までの過程で、移植医の判断で臓器が移植に適さないとされる場合もあります。 コーディネーターの説明後、臓器提供の了解があれば移植施設の責任者に連絡が入り、臓器摘出チームが編制されます。摘出チームは提供病院に来院して患者の状態を確認し、摘出の準備に入ります。心停止後、臓器保存液を流すための点滴ルートを確保してもよいか家族に確認します。これにより臓器が良い状態で摘出できますが、ベッドの側での小手術が必要になります(カニュレーションといいます)。提出チームが直接家族と顔を会わせることはありません。全ては主治医を介して説明や確認が行なわれます。 準備が整ったら患者が亡くなるのを待ちます。この間は、必要な治療は継続されます。臓器提供のために治療を中止したり、死期を早めたりすることは絶対にありません。摘出は患者がその命をまっとうした後から始まることです。家族は最後の瞬間まで患者に付き添うことができます。ドナーの準備と平行してネットワークはレシピエントの選定作業をすすめます。腎臓であれば、二人の腎不全患者が移植を受けることが出来ます。 心臓が力尽き心拍が停止すると主治医が死亡確認を行ないます。この瞬間当然家族は側にいることができますし、最後のお別れをしてもらいます。しかし心臓が止まった時から腎臓には血液が流れなくなり、細胞が死んでいきますのであまりに長い時間が経過すると腎臓が移植に適さない状態になってしまいます。従って短時間(できれば5分程)でのお別れをお願いしています。事前に点滴ルートが確保されていれば直ちに臓器の保存液を流して手術室に搬入します(ルートがなければ手術室で開腹後に保存液を流すことになります)。摘出手術は早ければ1時間ほどで終了します。傷を閉じて体をきれいにした後、家族にお渡しします。死亡後に行なわれた摘出手術やその他の処置の費用を患者に請求することはありません。その後の流れや手続は通常に亡くなった場合と変わりません。 基本的に、ドナーおよびレシピエントは臓器を誰に提供したか、誰から頂いたか判らないようになっています。レシピエントがその感謝の意を伝えたい場合は、コーディネーターを通じて手紙などのやり取りを行なうことが可能です。

⑤教育啓蒙・研究学会活動への取り組み

当院では、移植医療に関わる全てのスタッフが移植についての十分な知識を持つことが、安全で質の高い医療を患者に提供するために必要と考えています。また常に進歩し続ける移植医療の情報をアップデートしていくことも大切です。さらには近隣の透析施設スタッフ、腎不全患者への情報提供、教育も最適な治療を患者に施すために役立つと思われます。そして一般の方が腎移植あるいは臓器提供について触れる機会を作ることで社会的に移植医療が推進されるきっかけになると信じています。 当院では定期的に以下のような活動を行なっています。 ◇院内講演会(院内職員対象) ◇部署別勉強会(病棟、ICU、手術室などの看護師対象) ◇移植術前カンファレンス(移植医、腎臓内科医) ◇移植勉強会(透析施設対象) ◇腎移植説明会(透析患者対象) ◇腎移植市民フォーラム(一般対象) ◆日本臨床腎移植学会(研究発表) ◆日本移植学会(研究発表) ◆九州腎移植研究会(研究発表) ◆沖縄県臓器移植臨床研究会(研究発表) ◆院内研究発表会 ☆沖縄県コーディネーター会議 ☆沖縄県臓器移植推進員会 また医療関係者対象に実際の移植手術見学も行なっています(地域連携室に連絡)

膵臓移植について

血糖をコントロールするには膵臓で作られるインスリンというホルモンが必須です。しかし病気でこのインスリンが作られなくなると糖尿病になってしまい、インスリン自己注射を一生続けることになります。これを1型糖尿病といい一般に若年者で発症します。肥満や生活習慣病が原因で起こる2型糖尿病(インスリンは作られる)と違って、1型では容易に高血糖や低血糖を生じ、意識消失で病院に搬送されるなど生命を脅かすこともしばしばです。またこの状態で10年、20年を経過すると腎臓に影響が出て、腎不全に至り透析導入となる場合が殆どです。糖尿病性腎症で透析になった場合は、一般的に予後が短いというデータがあります。このような1型糖尿病患者を根本的に治療する方法として膵臓移植があります。腎不全で透析を行なっている患者には膵腎同時移植となります。これによりインスリンを打つ必要もなくなりますし透析も不要になります。何より寿命を延ばす事が出来ます。

膵臓移植レシピエント適応基準

膵臓移植(膵腎同時移植)には脳死ドナーから提供をうける脳死下移植と生体ドナーから提供を受ける生体移植の2つがあります。脳死下移植を受けるためには日本臓器移植ネットワークに登録する必要があります。また移植はネットワークの認定を受けた施設でのみ可能で、全国で16施設(H23.6現在)ありますが、沖縄県では施行できません。生体移植は実績のある施設が全国でも数施設です。当院と医療提携を行なっている九州大学病院は、日本で最も膵臓移植(膵腎同時移植)を行なっている施設で、脳死下・生体いずれも施行しています。当院では、手術適応のある患者さんを九州大学に紹介しており、沖縄でのネットワーク登録および術後の通院管理が可能です。 最近は全国的には脳死下ドナーが増加しており、待機期間も以前に比べて短くなってきています。現在沖縄県で唯一、膵腎同時移植を受けた患者さんも当院に通院していますが、九州大学で手術後3年経過し膵臓・腎臓とも機能は良好です。また手術を待機している患者さんも数人います。膵臓移植(膵腎同時移植)を考えてみたい方は、是非一度外来を受診してみてください。

※生命の危機にあるということで、膵臓移植の対象は1型糖尿病患者に限られています。2型糖尿病の方は対象になりませんので留意ください。

移植外来のご案内

当院の移植外来は、毎週月曜日午後と土曜日午前です。事前に予約をとって受診してください(出張・手術などで休診のこともあります)。その際、透析施設からの紹介状が必要です。移植を希望される方だけではなく、話を聞いてみたいというだけの方でも全然構いません。 2009年に移植外来を受診された患者は20組でした。当院で透析を行なっている患者が7名、他施設からの紹介が13名です。毎年毎年増加しており、特に他施設からの紹介が増えています。これまで15施設から患者さんの紹介がありました。これも当院の移植医療への信頼が増しているためと思っています。今後も、全国水準の移植医療を提供して沖縄県の腎不全患者さんのために全力で尽くしていこうと思っています。

腎不全という病気になったのは、あなたのせいではありません。 あなたには腎移植という選択があります。 移植を選んだあなたのために我々は全力でサポートします。 一緒に頑張りましょう。

外部リンク

九州大学臨床・腫瘍外科 (http://www.med.kyushu-u.ac.jp/surgery1/kanja/isyoku/index.html) 日本臓器移植ネットワーク(http://www.jotnw.or.jp/) 沖縄県保健医療福祉事業団腎臓バンク (http://kenkou-island.or.jp/09jin/jinbank.html) トリオジャパン (http://www.sepia.dti.ne.jp/trio/) 全国腎臓病協議会 (http://www.zjk.or.jp/index.html) 日本移植者協議会 (http://www.jtr.ne.jp/) 日本移植学会 (http://www.asas.or.jp/jst/) 日本臨床腎移植学会 (http://www.jscrt.jp/) 日本透析医学会 (http://www.jsdt.or.jp/) Transplant Communication (http://www.medi-net.or.jp/tcnet/index.html)

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